「那須国際短編映画祭特集(1/2)」

映画チャンネルメンバーで取材に出掛けました。会場の南が丘牧場にブースを頂き、ノミネート監督にインタビューを行いました。また那須フィルムコミッション代表で、映画祭実行委員長の五十嵐順一さんにもお話を伺いました。

後編を見る→「那須国際短編映画祭特集(2/2)
さらに今年9月に行った五十嵐さんのインタビューを掲載します。
10周年を迎えた映画祭の始まりの物語に強い思いを感じました。

キュレーター:松本卓也監督
司会:新麻記子
那須国際短編映画祭2015 ホームページ

ゲスト:
那須フィルム・コミッション代表 五十嵐順一さん
「スキップとドロップ」大川祥吾監督
「咲夏~鹿沼フォトラリー~」水野博章監督
「帰ろうYO!」松本卓也監督

出演

松本卓也 監督
MATSUMOTO, Takuya


MC:新 麻記子

【スペシャルインタビュー】

五十嵐順一
那須フィルムコミッション代表
那須シートフィルムフェスティバル実行委員長
五十嵐順一さん

『ブラックレイン』- ロケの困難さ

「ある時テレビを見ていたら映画ブラックレインのロケの困難さにふれ、特集を組んでいたことがあったんです」
と語るのは那須フィルムコミッション理事長の五十嵐順一さんだ。
このとき五十嵐さんは映画の専門家でもなければ、特段興味のあったわけでもなかった。

那須温泉に続く老舗旅館「一望閣」の4代目として経営をするなか、観光客誘致や町の魅力を伝える方法について自ら考える日々を送っていた。

温泉地ならではの特徴としてテレビの取材は多かった。当時、各旅館は個別にテレビ番組撮影会社からの申し出を受け、撮影地として取材クルーを受け入れることがあったという。

「旅館業を営んでいると『宿泊代を払うので撮影に便宜を計ってくれ』、『テレビドラマで舞台にするので協賛金を無心してほしい』など、この手のお願いも多かったんです。日々の仕事のなかで人員を裂いて、お金をかけてというのは効果のほどは問わずとして、負担が大きいものです。旅館のみならず、那須市内の観光施設の統一はとれず、個別に希望に応えることには限界があると思っていました」

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取材クルーを受け入れるにはどういう方法が良いのか?と思っていたとき、折良くアメリカでの”フィルムコミッション制度”を知り、五十嵐さんはこれだと思ったそうだ。

「当時は本当に誰に聞いて良いかわからない状況でした。そこでAFCI(国際フィルムコミッショナーズ協会)に加盟しないとといけないんだと考えたわけです。単身アメリカに渡り、研修を受けました。日本人の参加者もいましたが、神戸、横浜、福岡などみな大都市の方でした。那須は町です。個人で自費で参加したのは私だけだったと思います。こちらで認定資格を取り、那須町としてフィルムコミッションを作る運びとなりました。日本でも5番目くらいだったと自負しています。」

資格を取ることと実践すること

町に戻った五十嵐さんはまずロケ地データベースを作ることから着手した。もともと観光地として取り上げられている場所はもちろんとして、旅館や牧場、また商店や民家なども視野に入れた。声をかけていく作業が、フィルムコミッションの認知にもなるという考えだったそうだ。

ただしそれだけでことがうまく進んでいったわけではないという。

「最初は『なんの意味があるのか?』とよく聞かれました」

ドラマや映画のロケが入るとどれだけの経済効果があるかということを、宿泊、食事などを試算した資料を作り町議会や有力者たちに説明しました。地元の人間がやっていることなので、話だけは聞いてもらえました。

しかし実際に手応えを感じたのは、いくつか作品を受け入れた後で、映画にクレジットされるようになってからです。それまで個別に対応していた取材受け入れや広報活動が『 フィルムコミッション』の名に集約されてくるようになり、人々に理解され、協力を得られるようになっていきました。エキストラ登録や、ロケ地の紹介などで地元ネットワークが広がっていきました。」

五十嵐順一

旅館業界はバブルがはじけた90年代半ばから、苦境を強いられ、那須町も例外ではなかったという。90年代半ば山一、拓銀が倒産したころ、栃木では足利銀行がごたごたしていた。それまでの過剰投資が祟って廃業を余儀なくされる同業者もあった。

旅行客が減り、また客単価も下がる中、今までとおなじことを続けていては先がないという危機感もあったそうだ。その時、五十嵐さんは町の魅力を伝えることを通じた観光業の振興というビジョンが明確にあった。その情熱が様々な場で見いだされていく。

2006年、県の観光振興課から映画祭のホスト自治体をやらないかという打診があった。ショートショートフィルムフェスティバルの那須版(http://www.shortshorts.org/2006/ssff/jp/national/)をやり 、那須アワードをこの際にもうけた。これをきっかけに那須ショートフィルムフェスティバルとしてコンペティション部門を設けインディーズ映画を応援している。運営は那須フィルムコミッションが行い、自治体や大口スポンサーの手によるものではない。

こうした活動を続ける中で、警察、議会を含む公共機関、町内各種団体に信頼が厚く、撮影時の町の協力体制が出来ていることが、テレビ、映画関係者にも知られることとなり、ロケ地も広がりを見せたという。

例えばと五十嵐さんは語る。
「動物の撮影などは以前からよくありましたが、『吠えない犬をさがしてほしい』などの具体的な注文に応えられるのもフィルムコミッションの強みの一つです。方々声をかけると農家の犬が見付かりました。また殺人現場用に穴を掘って良いか?モンゴルの草原のシーンに使える場所はあるか?などいろいろと答えることが出来るのは僕らの強みです。実際、北海道のシーンの代替として東京からロケに来られる方が増えました」

これからのフィルムコミッション

フィルムコミッションの活動が町にあらたなネットワークを作り、観光振興に役立っている姿が見えてくる。
「町の強みや良いところを旨く利用してもらうために、映画祭に仕掛けも用意しています。『那須に行きたくなる』映画を撮ってもらう助成をアワードの形でやっているのはそのわかりやすい例の一つです。他にもロードレースが盛んな土地でもあるので、自転車映画祭を企画しました。あるいは温泉町ですのでそのものずばりの『温泉映画祭』も開きます。雪をスクリーンにする、コタツや布団の中から鑑賞するなど温泉旅館ならではの映画を楽しんでもらったりもします。マサラ映画祭ではインドダンスの講師をお呼びして、インドミュージカル映画の上映とダンスワークショップ組み合わせたりもしました。こういう工夫も続けていきたいと思っています」

編集後記

フィルムコミッション立ち上げたという五十嵐さんの活動は町を活気づけ新たなネットワークを作り、町の広報に貢献することとなりました。まだまだ新たなアイデアで変化し続けていくことでしょう。那須フィルムコミッションの活躍に今後も期待していきたいと思います。(取材2015年9月)